Dejima Auto Tuning blog

古い逆輸入車をいじっています。コテコテすぎてクルマ関連業者さんにゆだねることができず、道具も使うスキルも充実してきました。2015年にサーキットでクラッシュしてからまだ補修ちゅう(中断している状態)作業するガレージと自宅が離れており、自宅を離れることができない状況になり、インドアでできるクルマの内装→ミシンや革漉き機、という流れです。

工業用ミシンと革漉き機はいじって楽しい、革でなにかを制作しなくても(1)ミシン

 タイトルを違った側面から表現するなら、

工業用ミシン等の構造調整の情報を集めてバラシ組み立てができそうになく、かつ経験値の高いミシン屋とそれなりの対価を払って付き合う気が無いなら工業用ミシンや革漉き機を買うと持て余す、です。

後先考えずに動く人いますね。それでよくない結果になっても自分のせいでなく「運が悪かった」や、責任転嫁に躍起になる。極度に情報不足かつ緊急の状況ではそうせざるを得ないので、誰もが経験ある行動でもあるのだけど、考えるより動くほうが先という性向は機械を買うとき使うときにトラブルとして表面化します。

 

  • 入手は ミシン屋 or ネット どちら? 新品 or 中古、いやジャンク? 

最初に書くと、ダメな機械を買ってしまった場合の責任は買った側にも大ありです。逆の状況で安く買えた機械がよいものだったら「当たり!オレって天才」と自分の手柄にしちゃうのだから。

当方の機械は中古はヤフオク、中古が出回らないタイプのミシンはaliexpressの中華新品です。

田舎というか大手重工業が一つだけある企業城下町に住んでます。そこと関連が強くない経済活動は観光業を除いて貧弱で、このブログのカテゴリでいうと、クルマ✕、溶接消耗品ガス〇、ミシン✕となります。

溶接機は基本壊れませんけど、工業用ミシンや革漉き機は縫うプロと調整メンテするプロが明確に分かれており、扱う店がない土地では本来手にするべき道具ではありません。

web上で工業用ミシンの買い方「経験値の高いミシン屋で買いましょう」みたいな助言の対象から田舎者は除外されます。地方を知らないからしょうがないんでしょうけど、そういう革用ミシンや革漉き機を理解している業者さんが日本にいくつあるでしょう?大多数が東京と阪神に、数軒がそれ以外の都市圏にあるくらいかと。

工業用ミシン屋のつてがなく、それでも工業用ミシンが必要と思うなら自分で調整することになり、メンテ法のノウハウはweb上で拾うしかないです。

 

てなわけで、出品の良し悪し鑑別能力、メンテ調整スキルや技術を身につければ、ネットで中古、あるいはジャンクを買って「必ず失敗」ってことはないです。

  • 調整法・使用法を探す、避けたほうがよい中古機のタイプはあるか

ミシン屋のつても、知識と機械いじりのスキルもないなら、入手自体をあきらめるか、まず知識を習得して自分に可能なことなのか見極めが必要です。web上にあるのは、かいつまんだ説明ばかりで本気の調整解説は探し出すのが大変です。英語が読めたほうが探索範囲がぐっと広がります。なんならドイツ語も。

こちらは掲示板形式ですが、45k氏がズバリと解を導いてくれます。ですが、すぐ「教えてクレクレ」はやめましょう。その前に過去ログを掘り起こしましょう。全部読んでもいいくらいです。

上のはteacup掲示板のサービス終了により過去ログも含めきれいさっぱり無くなりました。代替は↓。

そして、

英語ですが、アメリカのレザークラフト趣味も仕事人も居るフォーラムの革ミシンセクションです。メンバー登録(広告で運営しているので無料です)しないと画像等が見れないと思います。ミシン台製作、ミシン全バラレストアなどの記事も多いです。CONSEWとかなじみがないメーカーがいっぱいありますが、セイコー製色違いだったりしますので最初のうちはミシンの画像で判断するとよいです。日本のようににセイコーTE系をありがたがることはないようですけど。となりのセクションに"LEATHER MACHINERY"ってのがあり、革漉き機やクリッカープレスなど革関連機械の情報交換がされています。

ミシンやサーボモーターのマニュアル等は機種名をググって画像のほうでコピーで作成されたpdfファイルの表紙をみつけるのが速いです。

書籍ではそのものズバリのタイトルのムック形態のが最近出版されております。パラパラとめくって「この程度の情報ぜんぜん要らん」と棚に戻しました。TE腕ミシンとニッピ皮漉機だけ持ってる、あるいは買うつもりであれば別ですけど。

総合送りミシンの針落ちや深さ、送りタイミング調整はクルマのカムタイミングより調整箇所が多く、割と込み入った作業です。うちのミシンは全部総合送りで脳メモリいっぱいいっぱい、上下送りはありません。

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忘れるので調整法をテープに書いて貼っています。

総合送りミシンの中古はだいたい返し縫いピッチが合わないことが多く、当初は「どこのミシン屋もヒドイな…」と思っていましたが、総合送りミシンの標準的な機械はもともと縫いピッチがあまり大きくないので、バランスを前進の縫いピッチに全振りして返し縫いはしない、という縫製者との約束で確信犯的調整をミシン屋がやった結果なんじゃないかと今は考えています。3機中古がありますが、ひどかったのはカマの周りに糸が絡みまくった状態で入手したやつ。どうにもタイミングが完調にならない→上下軸のタイミングベルトプーリーが、歯山一つズレていた組付けミスです。

動画で総合送りミシン調整してるのでいいなと思った当方のプレイリスト2本ですが、

www.youtube.com

2時間近いほうは基本的な調整すべて網羅しています。ただし、説明している人も調整を最適化しきれていません。 プレイリストのもう一つの動画の発信者

Uwe Grosse - YouTube

は他の動画でもすべて口述無し無駄なく見やすい撮影にて説明しています。

 

総合送りミシンは革など割と高価な素材を失敗なく縫う頻度が高い場合、さほど速度を上げないからガタがきにくいですが、例外としてバインダー機はラッパが下送りに接続して動くため慣性力も大きいのにベタ踏みしますから、あちこちガタが来てる個体が多く、似たようなラッパ付きと無しで迷ったら無しを選びましょう。本体の機構がへたっていたらバインダー部品がついてきても全然得じゃないですよ。摩耗しやすいパーツのうちカマはもともと消耗品、他では中外交互押えリンクと上下動ガイドブッシュに集中していますが、ドイツ製工業用ミシンだと交換パーツ買えないです高くて。

出回っている国産中古総合送りミシンは保守期間切れで純正部品は注文できないことが多く、パーツリストすらもう存在しないってこともありますが、元祖SINGER機をマネして製造された互換機の部品でほぼ代替できます。JUKIのオンラインパーツリストは登録してみることができたほうが便利です。昔のミシンと共通部品が残っている現行型はもうほとんどないですけど。中国語圏ならGolden Wheel(金輪社)の英語パーツリストとマニュアルがギリ実用になるかな程度です。同タイプのミシンが金輪製しかみつからない場合とかもありますので。

それからポンプ給油で押さえや返し縫いなどが電磁ソレノイドやエアーで動くコテコテの自動機で30年ものジャンクはまずユーザーの手に負えません。ミシン屋もよほど経験がないと直せないかと。それより古い機械のほうが故障個所も少なくメンテもユーザーフレンドリー。

  • 新品中華工業用ミシンの品質 

2機だけの経験談普通に縫えますが、半完成品です。

現地で組んでいる人はマニュアル通り作業をこなし、普通に縫えることを確認して出荷するが、仕組みの深い理解はないまま組み立てているってことかなと考えています。カマや針落ちタイミングは問題ありません。セットアップと試し縫いはしているようですが試し縫い条件はひとつだけ。

国産新品工業用ミシンでも、テーブルとモーターと合体させるのはメーカーではなくミシン屋です。エンドユーザーがそのまま使える状態で工場から出荷されないものです。

中華1機はごつくて乱暴な機械、潤滑などの構造が単純なので、不具合は上軸のセットカラー留め位置が間違っててスラスト方向に動いていたのと、厚いものを縫う際に面板内で動く押さえバランスリンクの位置が上昇した状態で面板裏の干渉を避ける切削が不足しておりガチ当たりしてうまく縫えないという2点でした。フライス盤で面板裏を追加工し、その他本家(コピー元)ミシンと比べるとどうにも作りが雑な下糸巻き装置や、素材が樹脂に置き換わってしまってる返し縫いレバー当て板等を交換しました。


441 sewing machine chattering sound ビビり音

もう一機は綿ロープやビニルチューブがあちこちに這っていて、下から上にポンプでくみ上げたのち綿ロープを伝って潤滑するタイプのミシンでしたが、まずポンプのローターが入っていないのでそんなチューブがついていてもくみ上げません。上のリザーバーに注油することにし、綿ロープを通したチューブの取り回しをすべてやり直しました。縫い糸がささくれるので糸道をたどり角のとがりをすべて落として研磨しました。

 

というような品質の中華の工業用ミシンは作るだけで、機能維持に必要なメンテサポートが貧弱だからごく一部たとえばHIGHTEXなどを除き広まることはないだろうと言われているようです。そこで、そういういわば半完成品を仕入れて調整や加工を加え、自分とこのブランドタグをつけたいわばOEMとして展開しているところが結構あります、メンテやサポート体制を用意してもらえるのであればよい経済活動だと思います。

  • ジャンク革漉き機はダメ?

当方はジャンクしか入手したことがないので、ダメではないと断言できます。長くなるのでこの続きは別記事にします。