Dejima Auto Tuning blog

古い逆輸入車をいじっています。コテコテすぎてクルマ関連業者さんにゆだねることができず、道具も使うスキルも充実してきました。2015年にサーキットでクラッシュしてからまだ補修ちゅう(中断している状態)作業するガレージと自宅が離れており、自宅を離れることができない状況になり、インドアでできるクルマの内装→ミシンや革漉き機、という流れです。

中華漉き機の源泉をさぐる

力作です。足を使わずweb検索だけのルポルタージュです。機械の良し悪しには触れません。

台湾大陸の801・802系漉き機の源流は中島製作所Yakumo経由の西山っぽいです。

恐ろしいおそろしい。いままで誰も気づかなかったのか。

これを書く前にnoteに記事を書きました。あらすじを書くと、

台湾大陸の801・802系漉き機の源流はYakumo NLS-7506らしい、です。

note.com

Yakumoは中島製作所、現JUKI松江の厚物ミシンのブランドです。これがいつ生産されていたのか、そして同じカタチをしている隣国801系の漉き機はいつごろから作られてるのかさっぱりわからないんです、過去を調べるのはweb検索の弱点。

 

さてどっちが先なんでしょう。中島製作所が隣国から守備範囲外の漉き機を輸入して自社タグをつけて売っていた可能性もないことはないです。

 

…ここまでが昨日noteに記事を書いたときの到達点。

 

本題の前に、古い漉き機の話題、とつぜん現れて消えたSeiko DCS-SI(1でなく大i)

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注目すべきは前面の右側のノブ、押し引きで3軸あるうちの砥石駆動軸ベルトがたるむ、つまり砥石ベルトを停止させておく機能がついています。かっこいい。ニッピNP-1の特許回避なんでしょうか。(特許型とニッピは謳っていますが、その特許を確認できませんでした。よそさまの特許に金払ってその機能を搭載したという可能性はあります)
こんなに綺麗にレストアして買う人居るのか?ヨーロッパの出品ですのでセイコーが時計のメーカーと同じと誤解してるのか、知ってるが買い手をだまそうとしてるのかわかりません。

 

Singer 509BS1と比べれば一目瞭然、同一機ですね。f:id:kazuhix:20211122164349j:plain

 

そして一つ戻ってDCS-S1を探すと"CONSEW DCS-S1"が。あっ、そういうつながり

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consew

SeikoのミシンをOEM調達して売ってたのはSingerが有名ですが、CONSEWはそのあとを引き継いでいるのと同じ流れか。Seikoはこの機械の砥石ノブの特許申請してないし、ミシンと漉き機はその生い立ちがまったく違う機械だし、生産開始はきっとSingerから図面を渡されて「これでよろしく」だったのではないでしょうか。

Seiko DCS-SIの次に、Seiko DCS-1ってのもごくわずかにあったらしい…

f:id:kazuhix:20211122184656j:plain左上が日本の画像、右がベトナムの動画より。アームのレリーフ・エンブレム貼り、上面のオイル穴などが違うので、ベトナムのは後年の中華製をそれらしくコスプレしたものかと最初思いましたが、そうやって似せるほどこの機械は少数しか世にでず無名なのでそれはない。

こうしてみると西山に砥石ベルトオンオフノブをつけたように見えませんか?わたしにはもうそうとしか。プーリー前の壁の幅が違いますが、厚塗り塗装で本体との継ぎ目がわかりにくいが別部品ですので鋳型全体を直す必要がないです。西山製作所の廃業時期は下町方面の漉き師に尋ねないとわかりそうにありませんが、同じ葛飾にあった西山とSeikoなので半完成部品や人材の引継ぎがあったのかもしれません。下町でこどものおもちゃのベーゴマを鋳鉄で量産してた頃ですから、ネームレリーフのすげ替えなんかはちゃちゃっとできますよ。

 

ここでようやく昨日アップしたnote記事のつづきに。

Yakumo NLS-7506はCONSEW DCS-S2だった

801の原型と思えるYakumo NLS-7506。これって直上のSeiko DCS-1の直系ですよね?アームと漉き刃奥の板が角ばったのと、砥石ベルトオンオフがレバーになり、オイル穴フタが○になったくらい。

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Yakumoと801

そして漉き刃前面のカバー以外Yakumoと中華801は同一ですよね。昨日まではどちらが起源なのかわからなかったんですが、Yakumo中島製作所のアメリOEM先(これまたCONSEW)に正解がありました。

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Yakumo

↑↓OEM。CONSEWではYakumo NLS-7506はDCS-S2という名前です。

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↑は現在の台湾801の主軸ベアリング化につながる興味深い機械。CONSEW DCS-S2ということなんですが、上面オイル穴がありません。主軸がベアリング化された中古台湾TK801にCONSEWからパーツで買った新しいプレートを貼ったのでしょうか?CONSEWの機械にはどちらも作動板の角にあるはずのビア樽軸への給油穴が無いです。それは西山の特徴でもあります。Yakumoのは開いてるけど位置がのちの801とは違います。

そして、CONSEWのマニュアルに1983年と…しかし、コピーのmodelんとこに貼り付け跡があり、表紙製作の使いまわし疑惑により、本当にその時期の製品なのかまでは確証がないです。そうでなくもとはカラー印刷でモデル名を強調した部分がエッジ検出でラインになったとか、厚紙のレリーフ加工によりモデル名が浮き彫り状態なのかもしれません。

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CONSEWは現在は社員25人規模の会社ですが、OEMで売った製品のマニュアルパーツリストをきちんと揃えています。この点日本はメーカーですら負け…はともかく、YakumoとCONSEWのマニュアルを比べてみましょう。

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CONSEW 比較 Yakumo

図と部品番号が一致しました。オリジナルは日本語、それを英訳(切れてるけどスペイン語も併記)ですね。OEM確定。CONSEW向けOEM生産はSeikoミシンだけでなく中島製作所のミシンでもあったし自然。

この次の型のCONSEW DCS-S3は見た目がS2と同一です。何が変わったかというと、台湾製になりました。パーツリストの漢字が繁体なので。その中で「サイズ」ってカタカナが消し忘れで残っていました。

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カタカナが一つ残存

つまり、CONSEW DCS-S3のパーツリストは中島製作所のNLS-7506の日本語のそれを改変して製作されたものだと思われます。

NLSは中島レザーskiver、7506は西暦+月ではないでしょうか。1975年6月に生産開始?この時期だと大陸は機械製造未発達の地、台湾でも機械生産技術はまだおぼつかないでしょうね。

ちなみに同じパーツリストの中に板金+革の漉きカスワイパーがあります、西山から簡略化したうえでキャリーオーバー。オリジナルはFortuna→西山ですけど。

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漉きカスワイパー

Seikoといい中島製作所といい厚物ミシンメーカーが突然漉き機を作れんのか?まあこれはモータースポーツでよく見るエンジニアとデザイナ、設備の移籍でなんとでもなります。日本の雇用慣習から考えるとそのタイミングは会社買収やら倒産。この記事の流れで考えると西山の廃業で宙に浮いた人モノがSeiko経由で中島製作所に移り、Yakumo NLS7506が作られたのではないでしょうか。CONSEWはSeiko、中島製作所どちらともミシンでOEM関係があった。
Singer系のSeikoDCS-SIからYakumo NLS7506へと全然ちがう機械になったのにCONSEWではすんなりとS1→S2の連続型番で処理してますね。

 

そして中島製作所やSeikoは台湾で部品をOEM生産しているうちに、丸投げのほうが安く作れるようになるわ、ニッピ機械の漉き機販売メンテ網には太刀打ちできず、不採算製品化で台湾とのOEM提携を切り離し漉き機から撤退した結果、CONSEWはOEM先を台湾に、工業ミシンと同じ。生産撤退した漉き機はともかく、Yakumo→JUKIと変わったものの継続販売している441ミシン、今は旧型になったが水平釜腕ミシン1341の中華コピー341系があることを考えると、OEM契約切れ時の権利の詰め等が甘かったのかもしれません。
ニッピ機械はアメリカへのOEMもなかったし、台湾への生産委託もしなかったんでしょうね。西山→中島と2度ニッピに挑むも敗退。そのデザインを台湾の下請けが拾い、アメリカへのOEMとして生産継続、さらに大陸へも移行して現在に至る。

まとめ

間違いないのは、

中華系801をたどると中島製作所ブランドのYakumoの漉き機とパーツリストを共有する機械から始まっており中国系独自の設計ではない。

ですがパクリとはいえません、きっとYakumoのOEMで部品製造、ひょっとしたら組み立てまで請け負っていた工場が台湾にあったのが始まり。

 

以下はまだ確証が足りませんが、なぜ厚物ミシンメーカーがいきなり漉き機を作り、その後撤退したのか?を西山廃業の流れっぽいという仮定のもとに、

 

西山廃業 葛飾で西山部品や鋳型、そして人材が放出

Seiko DCS-1 葛飾にあったSeikoが西山漉き機のアームNISIYAMAレリーフをSeikoに、砥石ベルト停止ノブを追加して継承、というか部品在庫さらえ程度だったのでは

Yakumo NLS7506(CONSEW DCS-S2)丸刃奥板が角化、アームが角張り社名レリーフ無しに、砥石停止ノブが○からレバーに。OEMでCONSEWに供給。CONSEWからのOEM要請をもはやSeikoが受けず、中島が人モノ込みで引き受けた可能性。やる気なかったのだろう機種名は会社名機械名の頭文字+日付。

台湾801系(CONSEW DCS-S3) 上の機械と同じもの、パーツリストすら同一だが台湾製OEMでCONSEWに供給

アメリカでCONSEWのようなOEM契約切れの中華ミシン等を輸入し、自社ブランドで売る小規模ミシンディーラーが雨後のタケノコのごとく増加、中国本土でも同じムーブメントが起こる

ブランド増えすぎてどれがホンモノかわからんね状態に…あえていうなら全部ホンモノとは言えない。

801系の台湾TAKINGが社名を拝借の上で同ラインナップでミシン・漉き機の商売をする深圳TAKINGにぶちきれ、主軸・樽軸アンギュラボールベアリング化に踏み切って「おまいらレベルでは真似できんやろ、ニセモノめ」とドヤる

ところで、801系を台湾生産OEMに導いたCONSEWの現行型DCS-S4は天板にオイル穴がある原型Yakumoと同一構造のままであり、玉軸受け化でオイル穴を無くした台湾TAKING製ではないのは明白、となれば台湾TAKINGは801系をもとに独自開発の主軸軸受け機構等を装着して販売している後追い勢ということになるかと。

 

西山廃業時期が昭和でないと成立しない推論なので調査を続行しようと思います。人に聞くしかないような。

 

最後にこの50年以上前の漉き機の画像ヤバくないですか。

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すべて吹っ飛ぶ画像

上2つはすごく似てます、下のだけアームが直角っていますがこの機械は現在も最近まで継続生産しているため後年仕様変更されたのかも。そしてこんだけ似てるのに全部別メーカー製で主要3交換部品の丸刃押え送りローラーは共通ではあるけどある場所の配置寸法が下2つは同じ、緑のだけ違っており、送りローラー一式が互換しません。「中華漉き機」の始まりは「Yakumo機の生産継続」で、現機採寸から起こしたパクリとはいえないのは上に書いた通り。むしろそれよりはるか昔の日本では……

「Fortunaとそこまで似すぎなのはあつかましくないか」だった機械はほかに一社だけありますが、そのイタリアFAVはFortunaと提携、イタリア市場を面倒みるという話になったそうです。